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2014年2月20日 (木)

ゴムバンドの摩擦力による動力伝達(テンショナーの追加)

これまでゴム部品の解析事例として、主にゴムバンドを用いた摩擦力による動力伝達をテーマとして進め、2次元モデルによる動力伝達、および3次元モデルによるクラウン効果の検証について、Slome-Mecaによる解析を行う事ができました。

それらの解析は、駆動軸と従動軸という2つの軸しか考慮していませんでしたが、今回は、2次元モデルに、更に張力を保持するためのスプリング式のテンショナーを追加しました。

まずは、結果の動画からご覧下さい。左側が駆動ローラー(Driving roller)、右側が従動ローラー(Driven roller)です。

テンショナーの動きを確認するため、負荷トルクを変動させています。

駆動ローラー(Driving roller)はTime=1で1回転しますが、回転スタート時にはトルクがゼロで、そこから直線的に増加して、半回転後にトルク最大になり、再び直線的に減少して1回転後にゼロに戻ります。この事例では駆動ローラーを2回転しているので、2サイクルの負荷変動が有ります。

Rband1201

スプリング式のテンショナーは、ゴムバンドが負荷によって緩む側のスパンに付けられています。先端のアイドラー(抵抗なしで空回りするローラー)はバネ力によってゴムバンドに押し付けられていますが、負荷の変動によって上下方向の位置が変化します。また、それに伴い、バネ力も変化しています。

負荷がゼロの状態です。
(ゴムバンドの色分けはMises応力、アイドラーの色分けは上下変位です)。
Rband1202

負荷最大の状態です。
Rband1203

負荷最大時には、上側スパンと下側スパンの応力の差が大きくなる事がわかります。また、テンショナー線先端のアイドラーの変位は見ただけではよく分かりませんが、色を見ると、上側へ移動しているようです。つまり、負荷が大きくなると下側スパンが緩もうとするため、その分テンショナーのバネが伸びてアイドラーの位置が上に移動するということです。

解析結果から、負荷トルクと、アイドラーの上下変位、テンショナーのバネ力をグラフにしました。

Rband1204

負荷トルクが大きくなると、ゴムバンド下側スパンが緩み、バネが伸びてバネ力(スプリング力)は弱くなり、アイドラーの位置は上に移動していることがわかります。

なお、ゴムバンドとアイドラーの間に摩擦力はありません。

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さて、以降はこの解析モデルの説明です。

まず、駆動および従動ローラー、ゴムバンドの形状・寸法や物性値、張力や負荷トルクの与え方などは従来と同じですので省略します。従来の解析は下記URL「ゴムバンドの摩擦力による動力伝達(前編)」から始まる一連の記事をご参照下さい。

http://salome-meca.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-e977.html

今回の追加部分であるスプリング式のテンショナーですが、下図の通り、「ベース」、「バネ(スプリング)」、「アイドラー」の3つの部品から構成されています。

Rband1205

これらはSalomeで別のパーツとして作成し、メッシュも別々に作成しています。そのため、各パーツ間での共有節点はありません。

Rband1206

そのため、下図のように各部品の部分にグループ名を設定し、Code_Asterで「LIAISON_UNIF(自由度の連結)」を使って、上下方向(Y方向)を連結しています。LIAISON系列は大変形・大回転(GROT_GDEP)には対応していないようなのですが、並進移動だけなら問題無いようなので使っています。これについては「LIAISON_SOLIDEによる剛体は大回転出来ない(http://salome-meca.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/liaison_solide-.html)」をご参照下さい。

Rband1207

Rband1208

また、これらの部品は全て横方向(X方向)には動かないので、上のように各点のX方向変位は拘束しています。

要素は、ベースとアイドラーはゴムバンドやローラーと同じD_PLAN(平面ひずみ要素)で、バネは2D_DIS_Tとしました。バネ定数はK_T_D_Lで設定しています(各方向、0.1[N/mm])。

なお、アイドラー部分は空回りするローラーなので、本来はゴムバンドによって回転させられます。しかし今回はアイドラーの負荷が無いため、まじめに回転させる必要は無く、ゴムバンドとの摩擦をゼロにした上で固定してしまっています。つまり、ゴムバンドはアイドラーの表面で滑ります。そのほうが設定が簡単で、おそらく計算時間も短縮できます。

解析手順ですが、従来のモデルと同様に、「(1)ローラーに軸荷重を与えて。ゴムバンドを張る」、「(2)従動ローラーにトルクを与えながら、駆動ローラーを回転させる」という2つの解析(2つのcommファイル)に分けています。具体的には、従来の事例をご参照下さい。

そのうち、(1)の段階(TIme=0~1)にて、ベースの下辺グループ「basel」に上向きに移動する変位を与えてテンショナーを移動させ、ゴムバンドに押し付けています。

Rband1209

Rband1210

また、接触設定については、アイドラー外面とゴムバンド外面のZONE設定を追加しています。ゴムバンド外面には「bandc2」というグループを追加しています。

Rband1211

「LISSAGE="OUI"」は接触面の法線を滑らかにする役目があるようですが、これを入れておいたほうが収束性が良さそうな感じだったので、とりあえず入れています。

(1)に続いて、ローラーを回転させる(2)の段階ですが、これは従来どおり別のcommファイルで「POURSUITE」を用いて継続計算させています。

ただし前述したようにトルクを変動させるように変更しています(従来は、1/4回転で所定値までトルクを上げた後は一定)。またトルクの最大値も従来の2倍に増やしました(従来は1.16[N・m])

Rband1212

後は従来どおり駆動ローラーを回転させるだけなのですが、どうも(2)のJOBの最初のステップで計算が収束しませんでした。どうやら接触問題を2つの「STAT NON LINE」に分けて継続計算する場合、接触状態の引継ぎが上手くいきにくい傾向にあるようです。これは、2つのJOB(commファイル)に分けてJOB自体を分けた場合でも、1つのJOB内で「STAT NON LINE」を分けた場合でも同様のようです。

実は、(1)のテンショナーを押し付ける動作も、当初はゴムバンドを張った後の後続として「STAT NON LINE」を分けて実施しようとしたのですが収束せず、接触設定のペナルティー係数を下げるなど色々試行錯誤しても収束しなかったので、ゴムバンドを張る段階と同時進行としました。

一方、(2)の段階の最初のステップで収束しない問題については、接触設定のペナルティー係数「COEF_PENA_CONT」および「COEF_PENA_FLOT」を下げる事で解決出来ました。これらは(1)の段階では両方とも500だったのですが、(2)の段階では、CONTの方を200、FLOTの方を400まで下げています。

Rband1213

上記の(1)でテンショナーを押し付ける方についてはペナルティー係数の調整でも上手くいかなかったのですが、なぜ(2)の方では上手くいったのかわかりません。このあたりはなかなか奥が深くて難しそうです。

あと、同じく初回ステップの収束性向上に効果が見られる「SEUIL_INIT」も0.1に設定しています。

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今回の解析は、仮想PC上のDebian7.2.0に、最近リリースされたばかりのSalome-Meca2014.1を入れて実施しています。

Salomeは7.3.0で言語を日本語に設定しています。

Code_Asterは12.1を用いました。
従来の11からの変更点として、STAT_NON_LINEからCOMP_INCRとCOMP_ELASの設定が消え、「COMPORTEMENT」になっています。記述する内容は同様のようなのですが、COMP_INCRとCOMP_ELASの区別をしなくて良くなった分、分かり易くなったのではないかと思います。

Rband1214

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今回のファイルは下記にzipで圧縮しています。

rband12.zip

rband12.mmed:メッシュファイル
rband12a.comm:前半(ゴムバンドを引っ張るまで)
rband12b.comm:後半(ローラーを回転させる)

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