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2012年8月25日 (土)

非線形解析の設定と、出力される応力・ひずみの種類について

大変形・大ひずみをともなう非線形解析を行う場合、使用するFEM解析ソフトの設定によって、出力される応力とひずみの種類が変わってきます。Code_Asterについても、自分が良く使う解析の設定で、どのような応力・ひずみが出力されているのか把握しておく必要があると思いました。

そこで今回、私が良く使う等方性線形材料(ELAS)と超弾性材料(ELAS_HYPER)について、非線形解析(STAT_NON_LINE)の設定によって出力がどのようになるのか検証しました。

当初は弾塑性材料も検証対象に入れるべきと思ったのですが、塑性変形については色々と設定することが多く、私自身もあまり塑性については詳しくないため、ややこしいので今回は見送りました。また機会があれば塑性についても試してみます。

ソフトウェアは、DEXCS2011-Salome-A3(64)(SALOME6.3 + Code_Aster STA10.5)の利用です。

まず検証用の解析モデルですが、下図のように、1辺1mmの正方形の六面体1次要素1個のみです(要素数1、節点数8)。1要素だけの挙動を検証することにより、メッシュの粗密などの影響を排除しています。

Nl0201

この要素の面のうち、X,Y,Z軸に垂直な面のそれぞれ1面ずつを面内拘束しました(fixX, fixY, fixZ)。そして、X軸に垂直な面の、拘束した側と反対の面(dispX)を、強制変位で1mm引っ張ることにしました。これで、X方向に単軸引っ張り(工学ひずみ 0 -> 1)の状態になります。

Nl0202


材料物性は、下記の通りです。

・線形材料:ヤング率=1.0 [MPa], ポアソン比=0.499

・超弾性材料:C10=0.4057582, C01=-0.254934, C20=0.0019713
          (Cxxの単位はMPa)
         ポアソン比=0.499 

線形材料は、工学ひずみ=1のときに反力=1[N], 公称応力=1[MPa]となるよう、ヤング率=1[MPa]に設定しました。ほぼ非圧縮を仮定し、ポアソン比は0.499です。

超弾性材料は、「ゴム(超弾性)の物性値を同定する方法」にて作成したエクセルによる同定ツールを用い、単軸引っ張りの工学ひずみ=0~2の範囲で、ヤング率=1[MPa]の線形材料と同じS-Sとなるよう、定数を調整しました。

Nl0203


超弾性材料でありながら、特定の範囲で線形挙動となる、変な材料になりました。
ポアソン比はほぼ非圧縮の0.499です。

次に、単軸変形と非圧縮を仮定して、理論式から各種のひずみと応力を求めました。
一般的に、FEM解析ソフトウェアで扱われる(出力される)のは、下記のひずみと応力になります。

■ひずみ
(元の長さ = L、変位 = u とする)

・工学ひずみ: ε= u / L
・グリーン・ラグランジュひずみ:  E = ε + 0.5*ε*ε
  (以下、“グリーンひずみ”と略します)
・対数ひずみ: e = ln (1+ε)

■応力
(反力 = f、 元の断面積=A とする)

・公称応力: P = f/A
         線形材料の場合、P = ヤング率 * ε
・第2ピオラ・キルヒホッフ応力: S = P / (1+ε)
・コーシー応力(真応力): T = P * (1+ε)

(これらは単軸変形と非圧縮の仮定下でのみ成り立ちますので、ご注意ください。)

理論式については、下記書籍を参考にしました。
「解析塾秘伝 非線形構造解析の学び方!」 著:石川覚志、日刊工業新聞社

各種の応力とひずみの説明についても、上記書籍が参考になります。
(初版本は、第2ピオラキルヒホッフ応力の記述に誤りがありました。正誤表を合わせて見てください)。

これらの式に、ヤング率=1[MPa]、初期断面積=1[mm^2]、初期長さ1[mm]の条件を入れて、横軸を変位(0~1mm)にしてプロットしたものが下図です。

Nl0204


今回の形状・条件では、変位=工学ひずみ=公称応力=反力 になります(全て0~1になります)。

さて、次はCode_Asterでの計算です。

細かい説明は省略しますが、上述の解析モデル・条件で、dispXへのX方向変位1mmを、100分割で与えました。出力は20分割にしています。
解析に用いたファイル(の一例)は下記にまとめて圧縮しています。

nl02.zip

nl02.mmed (メッシュファイル)
nl02_elas.comm (線形材料のcommファイルの一例)
nl02_hyper.comm (超弾性材料のcommファイルの一例)

線形材料(RELATION:ELAS)および超弾性材料(RELATION:ELAS_HYPER)の両材料について、「COMP_INCR or COMP_ELAS」、「DEFORMATION」を変えて計算を実行しました。その結果、まずは計算自体が出来たかどうかの結果が下表です。

Nl0205

○は最後まで計算できたもの、△は変位1mmに達する前に途中で停止してしまったもの、×は、「設定が適切でない」とのエラーメッセージが出て、計算が実行できなかったものです。
超弾性材料は「GROT_GDEP」のみでしか計算できないことが分かりました。
線形材料も、「PETIT」、「PETIT_REAC」、「GROT_GDEP」のみです。

計算できた7ケースについては、それらの各種出力(X方向成分)を、理論式によるひずみと応力のグラフに重ねてプロットしました。グラフ数が多いので、別途PDFファイル化しました。

nl02-1.pdf

●ひずみについて

7ケース全てについて、

・EPSI_NOEU:工学ひずみ
・EPSG_NOEU:グリーンひずみ

となりました。これは、公式ドキュメント「U2.01.05」に書かれている通りです。

●応力・反力について

REAC_NODAを集約したものが反力ですが、今回は断面積の初期値が1[mm^2]なので、これがそのまま公称応力になります(反力の集約方法は「節点反力を集約する方法」と同じ方法を用いました)。

(1)と(2)(線形材料でPETIT)については、反力は理論通りで、SIEF_NOEUは公称応力となりました。

(3)と(4)(線形材料でGROT_GDEP)については、計算が変位0.7mmを超えたところで停止しています。反力の値は理論からズレており、明らかにおかしな挙動となっています。SIEF_NOEUも、3つの応力理論値のいずれとも合致しませんでした。

しかし、微小変形領域(変形が数%程度)では、これら3種の応力の区別は実用上ほとんど無く、SIEF_NOEUの値もそれに近いものとなっています。線形材料で大回転を扱う場合、微小ひずみ領域に限ってはこのオプションで良さそうです。
(*「異なる「DEFORMATION」設定の混在」参照)

(5)についても、ズレ方は(3)・(4)と違いますが、同様のことが言えます(大回転については未確認です)。

(6)と(7)は超弾性材料のGROT_GDEPですが、反力は理論どおりで、SIEF_NOEUはコーシー応力(真応力)として出力されています。これも問題なさそうです。

なお今回の結果では、COMP_ELASとCOMP_INCRの違いがありませんでした。

以上の結果をまとめると下表の通りとなります。

Nl0206

結論として、

やはり線形材料(ELAS)では数%以上の大ひずみ変形は避けた方が良いようです。微小ひずみで大回転をする場合は「GROT_GDEP」で良さそうです。

超弾性材料(ELAS_HYPER)の場合は、GROT_GDEPのみです。応力はコーシー応力(真応力)になります。

今回は以上です。

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コメント

検証お疲れ様です。いつも参考にさせてもらっています。
RELATIONとDEFORMATION、使える要素の関係については、U4.51.11にまとめられていますので、そちらもご覧ください。

MAEDAさん、こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。
U4.51.11の情報ありがとうございました。今後参考にします。

Code_Asterは色々オプションが多く、それらの違いを把握するのが大変ですね。
でも、それだけ多機能ということなので、良いことなのでしょう。

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